戦後日本文化と建築意匠の相関の研究:森川嘉一郎

建築設計研究(プロジェクト)

Architectural Projects

「ゲームとしての国家」 (1994年度卒業設計、学内最優秀賞受賞作)

 「ディズニーランドとは実在するアメリカすべてが、ディズニーランドなんだということを隠すために、そこにある」とボードリヤールは指摘しているが、これはまさに今の日本の状況そのものである。都市風景のみならず、国家そのものがほとんどゲームと化している。
 これは非常に不幸な状態であろう。あらゆるものが遊戯的になってしまった結果、真の遊びや創造が成立し得なくなっているからだ。ディズニーランドはもともと外の現実を忘れるためのおとぎの国として建てられたが、この計画はちょうどそのリバーサルであって、日本という国家の中に敢えて「ゲームとしての国家」という疑似国家を作ることによって、日本という国家そのものがゲーム化していることを隠蔽するための一種の都市装置として構想されている。こうした戦略のもとに、国家的な機能すらブラックホールのようにのみこんで並列的にゲームにしてしまうような建築空間の設計を試みた。


   

   

「TOKYO BAY CATASTROPHIC PARK」(1993)

 90年代的ディズニーランドの試案。
晴海埠頭の埋立地の先端を、流体シミュレーションより引用されたコンターでランドスケープ化し、これを大災害のヘリ中継風に眺めるためのコースターライドが設けられる。


   

「ドウェリング・クエストI」(GA JAPAN LEAGUE '95出品作品)

 「玩具メーカーに勤める施主夫妻は、それぞれTVゲームのデザインとゲーム音楽の作曲を手がけている。典型的な分譲地を敷地とするこの住宅は、彼らのフィールドを一つの契機として、TVゲームと現実生活の境界を積極的に取り払うためのステージとして構想されている。ここでは家族や個に代わってピアノ・クルマ・コドモ・多機能トイレといったさまざまなアイテムが主であり、「部屋」に代わってこうしたアイテムのための「ブース」が並べられる。TVゲームの世界がゲーム機にではなく、入れ替え可能なソフトにあり、アイテム・店・キャラクター・土地の状態などが一緒くたにマス目状に並べられた配列から成っているように、この住宅の実体も器にではなく、各ブースに配されるアイテムのマトリックスにある。そしてプレーヤーたる住人は、ブースのアイテムを入れ替えることによって、住宅をエディットすることができる。 現実のアイテムはスケールを帯びるため、マス目は固定的なアイテムの大きさを基に揺らされる。これを吸収するために床及び屋根を交差梁のプレートでもたせ、板面計算による応力分布に従って余計な梁背を削ぎおとしている。屋根の交差梁はルーバーも担うため、柱位置の揺れが光の揺れを空間にもたらすことになる。この住宅において建築はゲームボードのマス目の役割を果たすに過ぎないが、建築化に際して必然的にまつわるスケールの問題を光の状態に反映させることによって、これを唯一の建築的表現とした。」


      



「VIDEO PASSAGE」(コーナン・フレッシュデザインコンペ金賞受賞作)

 「娯楽から教育まで、なめらかなスペクトルを放つビデオという媒体を都市装置として、歓楽地区と文教地区との間に、人と文化の流れを設計する。あらゆる方向へ投じられる映像は床・壁・天井等の文節を取り払い、陽光の動きと相まって、さまざまな時間の流れを視覚化する。
 新宿・歌舞伎町の北に位置するこの敷地は、アジア系外国人が多く滞在する領域にあり、アジア各国の最新のビデオが日本一早く流通する場所でもある。これを利用すればこの通りを、日や時間帯によって、中華街から韓国人街、タイ人街から無国籍街まで、チャンネルを回すように切り替えることができる。ビデオはさまざまな国の人々の存在をポジティブに表現する装置ともなろう。」


   

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(c) Kaichiro MORIKAWA
last update:12/2/1998